Cheer応援する

持続可能な集落を目指す『福山新田』のこれから

福山新田山暮らし支援会、4年目の挑戦。

福山新田地区のイメージは、『人里離れた山道を超えていった先に忽然と現れる、意外なほどに拓けた集落』と言ったところか。
周辺地区とは6~7km離れ、訪れた事のない人にとっては「この先に本当に集落があるのだろうか?」と不安に陥ることもあるかもしれない。
江戸時代に開拓され発展を遂げたが、現在はご多分に漏れず、高齢化率が50%を超える限界集落となっている。

地方自治体にある集落の、どこでも起こり得る少子高齢化、担い手不足などの現実がある中、福山新田では、将来にわたって持続可能な集落を目指し、平成28年、集落で移住生活をサポートする任意団体「福山新田山暮らし支援会」(以下支援会)を住民主導で立ち上げた。
その支援会も今年で4年目。

会の副代表として同地区で活動する地域おこし協力隊の西村暁良さんに話を伺った。

 

現在の支援会の活動を教えてください

4年目に入った支援会の活動は、新規就農相談イベントへの出展・年4回の山暮らし体験ツアー・田舎暮らしを考えている方へのフォローを中心に活動しています。
初めは移住者を増やすことを中心に考えて会が発足しましたが、今はそれに限らず、外との交流や相互協力、移住したくなる集落や定住できる集落の下地作りなど、活動の幅や志向は次第に広がってきています。
集落の上にある福山峠のふるさと広場を活用しようとしているのもその一つで、例えば、山暮らしの技術を持った集落の人を講師にして、様々な体験をしてもらうのも良いと思います。
参加する人は非日常的な体験でリフレッシュでき、かつ集落の人は普段あたり前にやっていることでお小遣いを得たり、感謝されたりで生活に張り合いができるのが理想です。

 

山暮らし体験ツアーについて教えてください

昨年、一昨年と年4回のツアーの参加者が34人で、その3分の1はリピーターです。
これまでの最多の参加回数は7回です。便の悪い山の中の割には結構なリピート率だと思います。
この体験ツアーで心がけているのは、レジャーの延長線上の体験ではなく、山里の暮らしをリアルに知って、興味をもって、あわよくば住んでもらうためのきっかけを作るための体験にすること。
そのためには、トラクターなどの農業機械を使って作業してもらったり、スコップを使った重労働もやってもらいます。
皆さん、下手だったり腰が痛かったりで思うようにはいきませんが、真剣に取り組むことで大切なことが見えてくると思っています。
ただ、一度聞いてショックだったのは、水路の砂利上げをして、主催者側から何気なく、「手伝ってくれてありがとう。とても助かった」と感謝の意を伝えたときに、「体験と言うよりバイトをやらされた気分だった」と言われたことですね。ボランティアと体験ツアーは違うので、こちらからの言葉がけも気をつけなければと、終わってからメンバーで振り返りをしました。

最初の活動から比べて、変わってきたこともあります。
最初のうちは、体験ツアーに参加した方に対して、その後継続して何かをすることは無かったのですが、参加者リストを作ってメール等でツアーの告知をしたり、参加前後のフォローをしたりするようにしました。また、支援会の中で体験内容を振り返る反省会を開くなど、PDCAサイクルを取り入れて毎回内容の見直しを図っています。
後は、一部の人に負担がかかると続かなくなるので、スタッフの役割分担も考えるようになりました。

そして、これらの活動は全て記録に残すようにして、自分たちの活動の見える化を図っています。
移住してきた若者や集落のお年寄りも少しずつ関わりだすようになってきて、良い感じになっています。

 

ツアーの中で気をつけていることはありますか

まず、参加者の方をあまりお客様扱いしないということです。こちら側も素人ですから、皆で一緒になってツアーを作りましょうと呼びかけています。そうすると、最近では食事の配膳や布団敷きなど、何も言わなくても自発的に動いてくれるようになりました。
後は、都会から来る方の「知識欲を満たす」ことはとても大事だということです。
どんな作業にも、経験に根差した奥深いノウハウがあるのに、そんなことも知らないで、単なる体験(しかもごく一部分の)だけで終わってしまうのはとてももったいと思ったことがきっかけで、作業に入る前に丁寧に解説するよう支援会の皆さんにお願いしたところ、参加者からは思った以上に良かったとのコメントが寄せられました。
今は、季節ごとに、稲作体験をする前に「米作りの1年」という勉強の時間を設けて、全体の工程の中の「今ここ」を教えたり、雪かき体験では、体への負担を減らすコツや安全に行うための注意点などのノウハウを伝えたり、それ以外の場面でも作業の意図など説明することを大切にしています。

そして、重労働もしてもらうと最初に話しましたが、田植えや稲刈りなどの華やかなところだけやって農業の「楽しさ」だけを伝えるのは、本当の体験じゃないと思っています。
夏の暑い中での草刈りや水路掃除など、大変なことも経験しなければ、ここでの暮らしを理解したことにはならないのです。大変なことも隠し立てせずに全て見せて、それでも惹かれる魅力がここの暮らしにはあるということを伝えられたらと思っています。

 

就農相談に関してはいかがでしょうか

まだ就農相談イベントへの出展を通じて、移住には繋がっていませんが、興味を持つ人は増えたと実感しています。
最近は農業法人への就職を考える人が多く、福山新田のような中山間地での独立営農に興味を持つ人はほとんどいません。ですので、時には相談者ゼロという会もあります。
しかし、来る人が少なくて見込みが薄いから出展を止めるというのでは、可能性もゼロにしてしまいます。
巡り合える確率は低くても、窓口を開けて活動を継続させていくということに意義があります。そういう取組みをしている集落であるということが、移住を考えている人からすると、何となく受け入れてもらえそうな印象を与えることにもなります。
現に昨年、就農相談にきた人の中には、何度も来福(福山を訪れること)して、近い将来の就農に向けて実地で山里の農業や暮らしぶりを学んだり、集落の方々との関係を深めている方も複数いらっしゃいますので、今後も積極的に移住・就農相談のイベントに出展していくつもりです。

 

支援会の今後について教えてください

体験ツアーに来ている方など、当面の移住予定はないけれど、都心からできることがあれば支援したいと言ってくれる人も増えてきました。
とはいえ、皆さん仕事も家庭もあって忙しいので、そうそう福山新田に来ていただくことも難しい状況があります。
そこで、そういった方々にも活躍いただける場を作ろうと、都内で福山を語り、行動する会議「ふくやまプリン」を発足し、3月に第一回会合を開催しました。
ふくやまプリンを発足したことにより、集まったメンバー(「アンバサダー」と命名)は、ツアー常連のファンというレベルから一歩踏み込んで、地区の将来にも関わって影響を与えていく当事者意識が芽生えてくることを期待しています。
まだ何ができるか具体的には白紙ですが、これから先も福山新田と関わってもらい、支援会の活動へ助言してもらったり、都心でのイベント開催や集落行事の支援などをしていただけるような関係づくりをしていければと思っています。

ーありがとうございました

 

ちなみに、「ふくやまプリン」の名称理由をたずねてみると、西村さんの描いた福山新田の図が、「プリンの形に見えるから」と、ふくやまプリンのメンバーが命名したとのこと。
移住者を増やす、関係人口を増やすと口では簡単に言えても、実際は本当に少しずつ「関係性」を積み上げた先に「移住」があるのではないかと思います。
支援会を通して福山新田との関係者が増え、ゆくゆくは関係者・移住者と集落の方々がお互いに住み心地の良い集落になるよう願って止みません。